「Never say never!」オノラン・アマールの優勝インタビュー

2023年度PWCスーパーファイナル優勝の
オノランが語る、強さの秘訣とは?

先日ブラジルで開催された第13回スーパーファイナルで優勝し、史上初のスーパーファイナル2連覇を果たしたオノラン・アマール。彼に、自身の強さの秘訣をどう分析しているのかを聞いてみた。今、世界でもっとも強いパラグライダーパイロットは何を語るのか?

―優勝おめでとうございます!今の気持ちは?

世界の頂点に、しかも2年連続で立てたというのは、ただただ最高です! まだ信じられません。
最終タスクでの無線で優勝が決定したことを知った時は、あまりに嬉しくて空中でガッツポーズを繰り返しました。

優勝が確定し、喜びのセルフィー。最終タスク前はオノランは暫定トップだったものの、他のパイロットが僅差で続き6位までのパイロット全員に優勝の可能性があった。最終タスクは風向きが悪く多くの選手がテイクオフできず、タスクキャンセルに。同時にオノランの優勝が決定した。

ランディングすると仲間たちが集まって僕を祝福してくれて、それはまるで小さな雲の上に乗っているような気分でした。PWCチャンピオンという名のこの雲の上に、もう1年間乗っていられます!

多くのパイロットが生涯をかけてPWC世界チャンピオンを目指し続けていますが、そこに到達するのは簡単なことではなく、近づくことすらできないパイロットも少なくありません。そんな世界の頂点に手が届いたというのは、言葉では言い表すことのできないほどの歓びです。パラグライダーコンペは、僕にとってまるで麻薬です。

―この大会で心がけたことは?

今回目標としていたのは、とにかく楽しむことでした。昨年優勝を果たしていたので勝利へのプレッシャーは少なく、ボムアウトを恐れずにいろいろなことを試しながら、純粋にレースでの飛びを楽しむことができました。
確かに優勝は狙っていましたし、それは同時にPWCスーパーファイナル史上初の2連覇を意味します。
2019年のバイショ・グアンドゥでのスーパーファイナルでは101位という散々で悔しい結果で、以来いつかリベンジするチャンスがあるなら次はもっと戦略的に飛び、勝つために全力を尽くしたいと思い続けていました。バイショは簡単なエリアではありません。飛んでいるうちに気象条件が変わることがよくあり、それを予測し、条件に合わせてフライトのリズムを大きく変える必要があります。2019年の時はそれが分かっていませんでしたが、今回はボムアウトしてしまった1タスクを除いて、ほぼ完璧に条件を読んで飛ぶことができました。
ボムアウトしたタスクでは、僕は集団から先行しすぎていたため(より確実に思えた)山沿いのルートを選択したのですが、正解は谷の真ん中を通るルートでした。太陽が高い位置にある時間帯だったので、日中は山沿いよりもフラットの方がサーマルが活発でした。学ぶべきことが、まだまだたくさんあります。僕は非常に攻めて飛ぶことができますが、もっとコンスタントに良いポイントを揃えるために、削るべき要素がまだあることも分かっています。

1日のうちに気象条件が変わることが多いというバイショ・グアンドゥ。写真は最終日のレースの舞台となるはずだったパンカスで、オノランはタスクキャンセル後にここをフリーフライトして撮影。

―誰が勝ってもおかしくないと言われていましたが、勝因は?

2021年から現在まで、僕は16回連続で表彰台に上がっています。これだけ安定して良い結果を出し続けられているのは、ひとえにたくさん飛んでいるからだと思います。普段のクロカンフライト、オゾンでのテストフライト、仕事が終わってからのちょっとしたハイク&フライなど、毎日多くの時間をフライトに費やすことで、反射神経が鍛えられ、また周囲をより高い解像度で観察できるようになりました。
僕の強みは、多くの場面で状況の分析と予測を、他のパイロットたちよりも迅速に正確に行うことができることだと思います。例えばタスク6では、僕はスタートからゴールまで常にトップポジションでフライトすることができ、また他のタスクではすべて3位以内でゴールすることができました。それでもリードできたポイントはほんのわずかです。

当然のことながら、サーマルで早く上昇するスキルとグライドでいかに最適なラインを見つけるスキル、そしてグライダーとハーネスの完璧なセッティングを知っておく必要があります。これらを習得するにはクロスカントリーやコンペで何年も飛び続けなくてはいけません。
サーマルに関して言えば、僕はXCトレーサーミニVを使用しています。バティストやリュックも使用しているこのバリオは非常に精密で、特に自分の体調が優れなかったり疲れている時など、自分の感覚とバリオが教えてくれる情報のズレを正確に把握する必要がある場面で、この精密さが違いを生むと感じています。ちなみにGPSはナビターOudieNを使用しています。

オゾンR&Dチームパイロットのオノラン。使用機材は当然ながら、エンツォ3+サブマリン。

―次の目標は?

前人未到のPWCスーパーファイナルで3連覇を目指さない理由はありません。絶対無理なんて、絶対ありません!

次の大会は、3月27日からのモンテグラッパトロフィーです。天候に恵まれれば、ワールドポイントで高得点が付く素晴らしい大会になるはずです。

5月にスペインのパガラハルで開催されるヨーロッパ選手権で、世界最高のパイロットたちとまた素晴らしいレースを戦えるのを楽しみにしています。バガラハルで飛んだことはありませんが、新しいエリアで飛ぶのはいつも新鮮です。

8月には、オゾンのグライダー開発のテストフライトでいつも飛んでいるグルドンでPWCが開催されます。ホームでの開催を、今から楽しみにしています。

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