第1回FAIジュニア世界選手権が、8月18日~31日の日程でスロベニアで開催され、20か国から76名の若きパイロットたちが集結し腕を競い合った。今大会は26歳以下のパイロットを対象としており、最年少はスロベニアから参加した16歳。
日本からは大澤彩花と花田瞬の2名がエントリーしていたが、花田が自己都合により不参加となり、日本チームは選手1名にチームリーダー(佐藤友紀)1名、計2名での参加となった。
開催エリアはスロベニアのトルミン。メインテイクオフであるコバラの標高は約1050m(高度差は900m)で、南西~南東の風に対応している。エリアの性格をひと言であらわすなら、ヨーロッパアルプスらしい山岳エリア。と言っても基本的にフライト空域となるのは1本の谷で、また極端に狭いわけではないので風の流れはシンプルで、ヨーロッパアルプスを飛び慣れないパイロットにも比較的飛びやすいエリアと言える。
また、車で1時間ほど南に位置する標高の低いリヤック(テイクオフ標高565m)をサブエリアとして使用することで、タスク成立の確率を引き上げられる。
2週間の大会期間中は、強風による長いウェイティングやサンダーストームによるタスクストップとなる日もあったが、7本のタスクが成立。上位15~20位の選手はPWCクラスのトップコンペでも遜色なくレースができるレベルで、オーガナイザーも驚くほどのスピードレースが展開された。
条件によっては荒れた空域を飛ぶことも何度もあり、ストールリッジでは期間中にレスキュー開傘が2件発生したが、今回が初の国際大会参加の大澤選手は集中力を切らさず、最後まで安全に飛びきった。
※ 大会期間中の日々のレポートについては、JHFパラグライディング競技委員会のFacebookご参照ください。
大会序盤はレースのスピードになかなかついていけなかった大澤選手だが、タスクを重ねるごとにサーマル選択やアクセルワークでフライト効率を上げていった。世界のレベルの高さを肌で感じること、その中でレースの飛び方を学ぶこと、他国チームの在り方を目にすること、日本よりも自由度の高いヨーロッパのパラグライダーの現状の一端に触れること、世界各国の同世代のパイロットと交流すること、などなど、大澤選手にとって非常に得るものが多かった大会となった。
今回の経験から学んだ多くのことを、日本のパラ界のこれからに役立ててくれることを期待している。
JHF大会での実績がなかった大澤選手が今大会に参加するにあたっては、JPA大会での過去の成績からフライトスキルに問題はないとの判断で、特別推薦という形で参加資格を得たという経緯がある。協会の枠組みを超えて次世代のパイロットに貴重な経験を積む機会を与えてくださったことに、この場を借りて今大会のチームリーダーとして、また日本のパラグライダー界全体がもっと自由で楽しいものになってほしいと願ういちパイロットとして、感謝申し上げたい。
大会結果
総合(74名中上位10名+日本人選手)
順位 | 氏名(国) | 使用機材 | 得点 |
1位 | Marcelo S Vilchez(スペイン) | ニビューク・アイスピークX-One、オゾン・サブマリン | 5136.4 |
2位 | Adrien Raisson(フランス) | ニビューク・アイスピークX-One、オゾン・サブマリン | 5120.9 |
3位 | Dusan Surina Jr.(スロバキア) | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 5076.2 |
4位 | Flavio Funiati(フランス) | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 5006.5 |
5位 | Justin Puthod(フランス) | ニビューク・アイスピークX-One | 5001.9 |
6位 | Ondrej Pohorelsky(チェコ) | オゾン・エンツォ3 | 4987 |
7位 | Jose J Belda(スペイン) | ニビューク・アイスピークX-One、オゾン・サブマリン | 4963.8 |
8位 | Brandon Hankins(アメリカ) | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 4872.9 |
9位 | Marcos S Fernandez(スペイン) | ニビューク・ピーク6、オゾン・サブマリン | 4849.2 |
10位 | Dylan Mansley(イギリス) | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 4798.9 |
61位 | Ayaka Ozawa(日本) | ニビューク・クライマー2P、ドリフター2 | 3199.7 |
女子(11名中上位10名)
1位 | Constance Mettetal(フランス) | ニビューク・アイスピークX-One、ドリフター2 | 4674.5 |
2位 | Celine Lorenz(ドイツ) | ニビューク・アイスピークX-One | 4658.7 |
3位 | Capucine Deliot(フランス) | オゾン・ゼノ2 | 4648.5 |
4位 | Daphnee Ieropoli(フランス) | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 4615.9 |
5位 | Sarah Zimmermann(スイス) | オゾン・フォトン、ジン・GR5 | 4287.9 |
6位 | Kanan Thakur(イギリス) | オゾン・フォトン、フォルザ | 3580.8 |
7位 | Ayaka Ozawa(日本) | ニビューク・クライマー2P、ドリフター2 | 3199.7 |
8位 | Riley Ferre(アメリカ) | オゾン・フォトン、ジン・ジニーライト | 2970.4 |
9位 | Aenaelle Acres(アメリカ) | ニビューク・イクマ3、アロー | 1929.6 |
10位 | Maria E. H. Quintero(コロンビア) | フロー・ミスティック | 1919.1 |
国別(20か国中上位3チーム+日本)
1位 | フランス | 13300.9 |
2位 | スペイン | 13075 |
3位 | イギリス | 12464.6 |
17位 | 日本 | 3621.7 |
関連リンク:1st FAI World Junior Paragliding Championships (大会結果もこちらに)