アメリカ・ユタ州のモンローにて、今シーズンPWC最終戦となるPWCアメリカが9月7-14日の日程で開催。日本からは岩﨑拓夫、小林大晃、四方純の3選手が参戦した。
ユタ州中央部はクロスカントリーのポテンシャルが非常に高いエリアとして知られており、今回の開催地であるモンローからは300kmを超えるフライトが何度も達成されている。
コンディションは非常に強く、雲底が5000m以上になるのも珍しくないため酸素ボンベの携帯が強く推奨され、実際ほとんどの選手が酸素ボンベを事前に入手してフライトしていた。
加えて、地上には毒ヘビ、サソリ、クマといった危険動物が生息する地域でもある。
そんな過酷な環境で開催された今大会。前半は悪天候に悩まされ、タスクストップやキャンセルが続くことに。
初日は近くでストームが発達しており、そこから遠ざかる方向に進む107kmのタスクが設定された。しかしレースが始まってしばらくすると、後方を飛ぶグループにストームの影響が到達し、乱気流に巻き込まれる。スタートから約1時間後にタスクはストップとなった。
翌日はキャンセル。3日目には61kmのタスクが組まれたが、未だストームの影響が残っており、トップが53km進んだところでタスクストップに。その翌日もまたキャンセルとなった。
後半になってコンディションはようやく好転。タスク3は谷渡りを含む60kmのジグザグコース。スタートからしばらくは強いサーマルでのスピードレースが展開されたが、やがてコース上は雲に覆われサーマルは弱まり、レースはスローモードに。ギアチェンジが必要な難しい条件のレースとなったが、71名のパイロットがゴールを決めた。
タスク4は好条件が予想されたこともあり104km。しかし条件ができ上がるのが予報より遅く、スタート時間とレース終了時間を遅らせてスタート。その時点ではサーマルも十分にありパイロットたちは順調に進んでいたが、やがて条件はどんどん渋くなり、生き残りレースの様相を呈していく。トップガーグルが揃ってスタックする中、より高い尾根を使うという大胆なルート選択をした選手が、このタスクでの勝利を手にした。
最終タスクは、今大会最長の119km。このタスクを制したのは小林選手! この結果で順位を上げ、大会総合でも9位入賞を果たした。小林選手は次のようにコメントを寄せてくれた。
「5390mの高度制限を軽々飛び越してしまうサーマルも沢山あり、ワングライドで40km進めたりと、とにかくスケールの大きなエリアでした。
攻めの飛びで挑みましたが、ファイナルグライドまではトップを狙える位置にいることが多いものの、ラインの読みなのか? 滑空性能の差なのか? 自分だけ最後にひと上げ余分に必要で20位台へ沈むということを繰り返していました。
最終タスクは、いつも以上に自分の信じる道を進んで攻め続けたら、ようやく念願のタスクトップを獲れました!」
総合優勝はフランスのバティスト・ランバート。オゾン所属パイロットである彼は、今回で5度目のPWC優勝だ。
最近PWCに参加する選手が少ないというやや寂しい状況となっていたが、今大会では10名の女子選手が参戦していた。女子優勝は、PWCトルコで総合2位であったアメリカのヴィオレッタ・ヒメネスで、総合でも10位入賞。2位に同じくアメリカのアレクシア・フィッシャー。そして四方選手が3位で表彰台に登った。
四方選手からは、次のような喜びのコメントが届いている。
「スケールの大きな山々とバレーの中を、幾度ものラッキーに恵まれて世界有数のパイロットたちと飛ぶことができてとても楽しかったです!!
PWC総合入賞が当たり前のアメリカ女子たちに刺激を受けながら、もっと高く速く遠くに飛べるようになるため、楽しみながら1つ1つできることを増やしていければと思います。引き続きよろしくお願いします!」
2024シーズンの決勝戦となるスーパーファイナルは、コロンビアのロルダニーニョで来年2月4-15日の日程で開催される。
大会結果
総合(上位10名+日本人選手)
順位 | 氏名 | 国 | 使用機材 | 得点 |
1位 | Baptiste Lambert | フランス | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2612.4 |
2位 | Evan Bouchier | アメリカ | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2590.4 |
3位 | Colin Rathbun | ヴァージン諸島 | オゾン・ゼノ2、サブマリン | 2590.2 |
4位 | Tim Rochas | スイス | ニビューク・アイスピークX-One、ロケット | 2578.9 |
5位 | William Stites | アメリカ | ニビューク・アイスピークX-One、ジン・GR5 | 2578.3 |
6位 | Tanguy Renaud-Goud | フランス | ニビューク・アイスピークX-One、ドリフター2 | 2575.4 |
7位 | Bill Belcourt | アメリカ | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2548.9 |
8位 | Téo Bouvard | フランス | オゾン・ゼノ2、サブマリン | 2545.6 |
9位 | 小林大晃 | 日本 | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2542.5 |
10位 | Violeta Jimenez | アメリカ | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2536.9 |
28位 | 岩﨑拓夫 | 日本 | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2307.5 |
52位 | 四方純 | 日本 | オゾン・ゼノ2、ニビューク・ドリフター2 | 2051.5 |
女子(10名中上位3名)
1位 | Violeta Jimenez | アメリカ | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2536.9 |
2位 | Alexia Fischer | アメリカ | オゾン・エンツォ3、サブマリン | 2527.6 |
3位 | 四方純 | 日本 | オゾン・ゼノ2、ニビューク・ドリフター2 | 2051.5 |
チーム戦
1位 | NIVIUK 1 | 88 |
2位 | FLYMASTER | 74 |
3位 | NORTHWEST PARAGLIDING | 63 |