第4回
テストパイロットの、とある1日

ボンジューーーール!
フランスに帰ってたくさんテストしてきました。
新しいプロトタイプでたくさんのグライドテストやジェネラルテスト、そして今回はEN用テストも数多く行いました。
レスキューを追加でもう1つ持って、アクセルを踏み切って、コラップスラインに手をかけて…
ばっこーーんとグライダーを全部潰して、グライダーがどう動くか感じながら見るあの一瞬は最高にドキドキしますが、テストパイロットの仕事の中で、僕の1番好きな時間の1つです。
先日はいくつかの認証用グライダーを持ってスイスに行き、湖の上でほぼ全部のグライダーを試して、現在結果待ちです。韓国でもフランスでも、滅多に湖の上でテストしたことはありませんでした。
湖の上ということで、普段飛んでいても滅多にならないようなところまで潰して試すことができたので、今後は大会でも思い切ってフルアクセルを踏めそうです❤

スイスの、EN認証テスト機関エアターコイズのエリアのテイクオフ。
さて、今回はテストパイロットの日常ということで、仕事の日の1日を日記風に紹介します。
実は前々回の原稿確認で読んでもらった方に、「マニアックすぎて頭がポカーンとしたので、シュン君の普段のテスト日を紹介したりしてよ」と言われたのです。
ただ1つご理解いただきたいのは、僕の取り組んでるものは発売まで何年もかかるものもたくさんあるということ。
今回載せている写真の中には、リアルを見せれるようにがんばって、でも会社の規則の範囲内でギリギリOkをもらったものもあるので、詮索はしないでくださいね。
9:00
おはようございます!
僕が今住んでいるのは、会社から徒歩で5分くらいのアパートです。なので歩いて出社です。

まだサマータイムではなかったのでだいぶ眩しい!
大体1番に会社に着くので、鍵を開けて、コーヒータイムします。

会社からの景色はこんな感じ。
コーヒーをゆっくり飲んでいると、みんな続々と出社してきます。
10:00
それから今日はグライドテストがないので、風とコンディションが良くなるまでは、メールチェックや事務作業をサクッと行います。
よく保存し忘れて数時間を無駄にすることがあるので、1つ修正して形が変わったりするたびに、こまめにセーブを忘れないようにしています。

11:00
コンディションが良くなったら飛びに行きます。
みんなで車に乗って20分。ホームエリアのゴードンに到着です。

この日(3月23日)の前日はとっても寒かったためか、テイクオフには雪が残っていました。
サクッとチューニングしたり準備をして、テイクオフ!

今日もゴードンは良いコンディションでした。年に何日飛べるんでしょうか。ケネディというもっと近いエリアを合わせれば、年間300日くらいは飛ぶことができるんじゃないかなと思います。
高く上げて、試すべきことを試します。何を試すべきかは、グライダーによって違います。
この日はいくつかのまったく違うタイプのグライダーやハーネスのテストだったので、大体午後1時半くらいまで、たくさん飛んでトップランして、グライダーを変えての繰り返しでした。

ちなみに次の日はみんなでクロカン日和。僕はプロトタイプのグライダーで3時間くらいかけてトライアングルをしていました。
長く飛ぶことで気づくこともたくさんあるので、大事な仕事です。そう、断じて遊びではありません。お客さまのために大事なことなのです。
14:00
テスト組でグライダーのフィードバックをしたりしながら、ランチです。
どうやらフランスでは、自分のデスクでは食事するのは良くないという風潮があるようで、みんなベランダで食べます。
写真は、サーモンアボガドご飯。醤油わさび味で美味しいけど、11.5ユーロ、日本円で2100円!高い! 毎日食べられるものではありません。

食べかけですみません!
15:00
午後3時を過ぎると大体コンディションが弱くなるので、またオフィス作業開始です。
テストのレポートと、どんな変更や修正を加えたかを記入します。
みんな適当なとこに降りて、今1番良いと思ったものを変更して試して、結構考えながら飛んでるので、忘れないようにメモは必須です。

Tyrとインターンのアドレアンと、いろいろとシェアしていました。
それからグライダーやハーネスたちを比べたりなんだりしてると…
17:00
お仕事終了です。
え、結構簡単そうに見えますか?(笑)
確かに時間は短いかもしれませんが、かなり濃く、とても刺激的です。
テストパイロットに興味がある方はいつでも連絡ください。どんな勉強やスキルが必要かといったヒントをシェアできるかもです。
勉強もたくさん必要ですが、英語を簡単に話せて、どんなグライダーでもコンディションでも気合いでフルアクセルを踏めて、どこでも働けるパッションさえあれば可能だと思います。

夜ご飯は、この日は時間もあったので久しぶりに日本食を作りました。
フランス出国の前日で、余っていた食材で日本食パーティ。手羽先の煮物や、かき玉汁に豚肉コチュジャン食べてますね。
やはり故郷の味は力になります。

危ないこともたまにありますが、正社員として働くテストパイロットは結構安定していて、僕はとても満足しています。
僕は感覚派な気がしていて、どんな時でも体が最適な行動を勝手にできるようになるまで試して、練習を重ねます。

この環境もあって仕事以外にも時間がしっかりと取れるので、僕はその時間をデザインの勉強に充てています。
最近、僕が子供のように毎日(勉強用に)遊んでいたグライダーのデザインが終了しました。
これから次のものを作るのかどうかはテスト結果次第ですし、何年後に皆さんにお見せできるかわかりませんが、上手くできてるといいなと思っています。
中の人、乱入
―いやあ、テストパイロットの日常を垣間見ることができてすごく興味深かったです!
わ、サトユキさん登場(笑)。お疲れさまです。
―すみません中の人がしゃしゃり出て。いや、ちょっと瞬くんに聞いてみたいことがありまして。
最近は国内外問わずSNSなどでさまざまな情報が溢れていて、勉強になる反面、見ていて正直「それはどうなんだろう?」と首をかしげてしまう内容も散見されたりして。そのあたり瞬くんはどう見ているのかな、と。
そうですね、僕はパラグライダーは基本的にすごく安全なスポーツだと思います。
ですが、その人の許容範囲を超えるコンディションだったり、その人にとってオーバースペックなグライダーだったり、不確かな知識に基づいた間違ったインプットによって対応しきれない範囲に入った瞬間に激変することもあります。
発信されている内容が当てはまるグライダーもあれば、メーカーやモデルが違うために当てはまらないこともあるわけで。え、それ言いきっちゃっていいの? と思うことはありますね。
―ですよね。あとは、その情報古くない? と思うこともあるんですけど…
確かに、グライダーもルールも変わり続けていますからね。一世代前の状況に基づいた内容が発信されていたりもしますよね。日本はメインマーケットのヨーロッパから離れているだけに、情報のタイムラグは尚更大きいのかなと、現地にいる身として感じます。
―グライダーを開発する最先端にいるわけですから、余計にそう見えるのでしょうね。
逆に、僕が職業柄、神経質に受け取りすぎている部分もあると思います。最先端にいてもわからないなと思うこともありますし。
先日ほぼ同じ日に複数のインストラクターさんから同じ質問を受けましたが、それがデリケートだったり正確性を求められるトピックだったりする場合は特に、直接お話ししたりやりとりする方がいいなと改めて思いました。
というわけで、何か気になることがありましたらご連絡ください。ぜひまた情報をアップデートしましょう。
―今後の予定は?
明日はパリに移動して、スリランカの工場に飛びます。
お待たせ中のグライダー達を作り上げて、皆さまがより安全に、より遠くに、より楽しく飛べるようなグライダーを開発していますので、これからもよろしくお願いいたします!