2023年を振り返る 注目トピック8選 ⑥2つの世界新記録

2023年に樹立された、2つの世界新記録

350kmトライアングル

2023年には2つの世界記録が誕生した。1つめは、8月20日にフランスのバティスト・ランベール(オゾンのR&Dチームパーロット)が、フランスのオート・アルプスで達成した、350.53kmのFAIトライアングル記録。フライト時間は実に10時間51分にもおよぶ。平均時速は32.83kmだが、アゲインストを進みスピードが落ちた最後のレグに到達する前の250kmは、平均時速38kmでカバーしていた。

記録と同時に話題となったのは、彼がエンツォ4のプロトタイプに乗っていたことだった。エンツォ3は今も変わらずトップコンペシーンでもっとも選ばれているグライダーだが、発表されたのは2017年の春。後継機が出ると噂されながらなかなか情報が出てこないという状況で、ようやくその姿を現した形だった。しかしその後、エンツォ4の情報はふたたび影を潜めている。

バティストの350km△フライトログ


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315kmアウト&リターン

2つめの世界新記録が、12月23日にチリのラウル・エスペホによって、チリのイキケで達成された、315kmのアウト&リターンだ。使用機体はエンツォ2。9時間19分のフライト時間のうち、海抜高度が1000mを越えたのはわずか1度、数分間のみ。サーマルはほとんどない、斜面上昇風だけで達成された記録である。

イキケは海岸沿いに続く斜面を、点在する砂丘を越えながらフライトする完全なる海エリア。当初イキケは砂丘でのワガが存分に楽しめることから、主にアクロパイロットがヨーロッパから訪れるようになっていた。しかし2002年にフランス人パイロットがトコピージャからイキケまでの212kmフライトを達成して以降は、プレPWCをはじめ、いくつかの選手権大会やチリ選手権といった、クロカンコンペの開催地となっている。

ほとんど回さずに達成された、315kmのアウト&リターン


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なお、それまでのアウト&リターン記録は、2022年8月のトーマス・エルゼン(スロベニア)によるスロベニアとイタリアにまたがる311kmのフライトと、2023年7月のクレモン・ラトゥールがアラヴィ山脈の北端付近からグルノーブルを超えて帰還した、同じく311kmのフライトだった。

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